名種雄馬を生んだ名繁殖牝馬 ~種雄馬紹介番外編~

ばんえい界きっての名繁殖牝馬
ダイヤテンリュウの母トツカワ

※写真の無断転載は厳禁です。よろしくお願いいたします。

1981年生 栗毛
父:ジャンデュマレイ 母:吹姫(母の父タカラコマ)

 サラブレッド競馬のオールドファンには「華麗なる一族」という牝系を称える言葉に親しんだ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 サラブレッドの「華麗なる一族」はミスマルミチ(姉ヤマピットが最優秀2歳牝馬・最優秀3歳牝馬・最優秀4歳以上牝馬)~イットー(最優秀2歳牝馬・最優秀4歳以上牝馬)~ハギノトップレディ(最優秀4歳牝馬。半弟ハギノカムイオーは宝塚記念馬)~ダイイチルビー(最優秀4歳以上牝馬 ・ 最優秀スプリンター)と連なる牝系を紹介する際に使われた言葉で、1970年代にイットーの活躍を通じてテレビの競馬中継で使われ始めたフレーズです。牝系にスポットを当てる競馬マスコミ用語としてエポックメイキングな言葉だったと思います。

 さて、この「華麗なる一族」はばんえい界にも存在します。というより、名種雄馬の出身は華麗なる一族だらけなのでは?と思っています。というのもキタノテンリュウの記事で紹介したオーシャンローズやクインフェアなどを始め、兄弟で重賞勝ちを出している、あるいは種雄馬として成功しているファミリーが多いのです。二世ロッシーニで紹介したマツノコトブキも兄ハヤホマレは名馬でしたし、平成の名種雄馬ウンカイの妹アンローズは重賞10勝。鉄鯉の前編で紹介したカネサブラック、カネサテンリュウの兄弟もしかりです。種雄馬として成功する条件に「牝系に活躍馬」というのが必須なのではないか?と思うくらいです。もしかすると遺伝する競走能力は、サラブレッドよりばん馬の方が大きいのかもしれません。

 そして、鉄鯉のサイアーライン<後編>で紹介したダイヤテンリュウもまた、活躍馬が多数でている牝系の出身です。母トツカワの産駒が活躍した時期が、ダイイチルビーの活躍と重なるので、当時のばんえい競馬ファンの中にはトツカワのファミリーをサラブレッドの「華麗なる一族」と重ねる人も多かったと思います。

 トツカワ自身の競走成績55戦2勝と目立つものではありませんでしたが、その血統は素晴らしいものでした。トツカワの父はジャンデュマレイ、母の父はタカラコマ。この二頭の種雄馬はいずれ種雄馬紹介コラムで取り上げる偉大な種雄馬です。そして牝系も素晴らしく、おばにあたる能信(父:鉄鯉)はニューフロンテヤ(父:ジャンデュマレイ)、タカラフジ(父:タカラコマ)と2頭のばんえい記念馬の母です。トツカワは2頭のばんえい記念馬と非常に近い血統構成を持っていました。そして素晴らしい繁殖成績を上げます。

1987生 ダイヤテンリュウ
(父キタノテンリュウ 重賞10勝 年度代表馬)
1989生 ニセコクイン
(父ハイスピード 重賞5勝)
1990生 ヨウテイクイン
(父ハイスピード 重賞10勝)
1992生 コトブキクイン
(父マツノコトブキ ばんえいオークス2着)

 95年の牝馬準重賞レディースカップ(4歳以上牝馬オープン)では1~3着をトツカワの三姉妹で独占し、トツカワの優秀さを強烈に印象付けました。

 1997年の古いハロンに名繁殖牝馬の紹介コーナーがあり、トツカワが取り上げられていました。希少な立写真が掲載されていたのでご紹介します。トツカワを見ると、毛色も大きさも含めジャンデュマレイ(ベルジアン種)の影響が大きいなと感じます。母の父タカラコマはブルトン種の父とペルシュロン系の母をもつ種雄馬です。トツカワにはベルジアン種が半分をしめるもののブルトン、ペルシュロンと3つの品種が混ざりあっています。
 
 このトツカワにキタノテンリュウ(ブルトン3/4、ペルシュロン1/4)を交配してダイヤテンリュウが生まれました。ダイヤテンリュウは3品種の混血により日輓種が生まれるプロセスを体現しているような種雄馬です。

【おまけ】現在オープンで活躍しているアアモンドグンシンはヨウテイクインの孫にあたります。(母サトミクインはヨウテイクインの子です)ダイヤテンリュウと言いアアモンドグンシンといい、5歳でばんえい記念にチャレンジして競走中止しているのはどこか因縁を感じます。

参考資料と写真提供

・ばんえいスタリオンズ 田島芳郎著
地方競馬全国協会機関広報誌「ハロン」1997年5月号~1998年5月号連載

・THE BEST BROODMARE
地方競馬全国協会機関広報誌「ハロン」1997年4月号

・日本馬事協会 登録馬情報 サイト

私設ばんえい競馬資料館 サイト

写真引用:1997年ハロン4月号:NARへ申請して掲載許可を取っている写真です。無断転載厳禁です。

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