鉄鯉(てつり)~早く、速く。今のばんえい競馬に合うブルトンの血 <後編>

 ブルトン種の名種雄馬鉄鯉からは、主に二つのサイアーラインに分岐をして、その血を今のばん馬達に伝えています。後編は鉄鯉~キタノテンリュウ~ダイヤテンリュウの血脈について紹介します。

キタノテンリュウから現役活躍馬につながる系譜図です
こちらの図を参照しつつ以下文章をお読みください

鉄鯉の血を広げた
キタノテンリュウ

 鉄鯉晩年の傑作、キタノテンリュウは1976年にデビューしました。ブルトン種の産駒らしく2歳戦から活躍してばんえい菊花賞などの世代重賞を勝ちましたが、古馬になって苦戦し7歳と早くに引退しています。

 種雄馬として日本馬事協会に買い上げられ、道東の重種主要産地からはなれた胆振地区で供用されました。しかし初年度から産駒が活躍して一躍人気種牡馬となり、供用地のハンデにも関わらず数多くの産駒に恵まれました。日本馬事協会のデータを調べると、1982年~90年の間供用され産駒は全部で511頭。繁殖登録がある牝馬が131頭、種雄馬になった馬が31頭もいて、鉄鯉の血を大きく広めています。

 キタノテンリュウ産駒は一様に早熟性に優れ、2歳戦~世代戦で活躍しています。例外はテンショウリで、8歳でばんえい記念を勝ちました。だた、テンショウリが勝ったばんえい記念も、鉄鯉産駒ダイケツが勝ったばんえい記念と同様に軽い馬場でした(水分量が7.0%タイムは2分59秒1)。とはいえ軽馬場であっても8歳でのばんえい記念勝ち。テンショウリの母はペルシュロン種で晩成型で高重量にも適性があったのではないかと思われます。テンショウリからはツルマキシンザンを経て、11歳のばんえい記念(4着)まで走ったシンザンボーイが出ています。シンザンボーイは種雄馬となりテンショウリの父系を継いでいます。

 そして出走歴がない種雄馬、第三竜王からホクリュウイチ(旭川記念勝ち)を通じて2頭の名牝が出ています。キタノテンリュウ系の中ではちょっとマイナーな種雄馬から生まれ、ケンジュオーというかなりマイナーな種雄馬を配合している二頭の牝馬は、同じ牧場の出身です。これは牝系の話になってしまうのでちょっと脇道にそれますが、オーシャンローズの半姉コマクイン(父フジエーカン)からはコマサンブラックコマサンダイヤ。同じく半姉ノリノメイチャン(父アサヒホウザン)からはアオノブラックが出ています。そしてクインフェスタは自身も重賞勝ち馬であり、半兄インフィニティー(フジエーカン)はばんえい記念馬、半兄トレジャーハンター(父アサヒホウザン)は重賞勝ち馬です。ばんえいにも「名牝系」というものがあることがうかがえると思います。優秀な牝系から生まれる種雄馬達からも鉄鯉の血は広っていくことと思います。

ばんえい競馬の名血を集めた
ダイヤテンリュウ

※写真の無断転載は厳禁です。よろしくお願いいたします。

体高:181センチ 半血・鹿毛 ニセコ町産 1987年生
父:(ブル系)キタノテンリュウ
母:(半血)トツカワ<母の父:(ベルジアン)ジャンデマレイ>

 この美しいお姿!もともとハロンに掲載されていた立写真を見てもきれいな馬だな…と思っていたのですが、改めて種雄馬になってからの写真を見てみると、さらに美しさに磨きがかかっています。(ハロンに掲載されていた写真は年度代表馬の記念撮影で冬毛なのです)ばんえい競馬きっての貴公子ダイヤテンリュウ。父は名種雄馬キタノテンリュウ。母は名繁殖牝馬トツカワです。【トツカワについては番外編をお読みください】
 体高は180センチを超えた堂々たる体躯で首刺しも太く脚も長く、今の私たちが知るばん馬の体型になっています。キタノテンリュウの体高は170センチ。鉄鯉は163センチですので、品種混血により大型化が進んでいることがここからもわかります。

 ダイヤテンリュウは2歳年度にイレネー記念、3歳時にばんえい菊花賞、4歳時に旭川記念やはまなす賞など重賞5勝、5歳時には岩見沢記念、チャンピオンカップと2~5歳まで毎年重賞を勝ち、5歳時の成績で1992年の年度代表馬に選ばれています。
 ただ、5歳にして挑戦したばんえい記念では競走を中止しています。92年はテンショウリが勝った年で、馬場は軽かったのですが…。6歳時には4~5歳時の勢いがなく、ダイヤテンリュウは7歳で引退し、父同様ばん馬としては若くして種雄馬となりました。

 良血で素晴らしい競走成績、そして世代戦で強かった早熟性。ダイヤテンリュウは種雄馬入りしたときから期待され、産駒は初年度から大活躍しました。初年度で2位に3倍近い差をつけて2歳リーディングサイアーを獲得し、初年度産駒デビューイヤーを含め2歳リーディングサイアーになること4回、総合リーディングサイアーになること6回。2000年代を代表する大種雄馬となりました。


 日本馬事協会のデータで見ると、総産駒数は557頭、繁殖牝馬登録は173頭、種雄馬は38頭と父をしのぐ産駒や種雄馬を残しています。
ダイヤテンリュウ産駒の種雄馬たちの主だったところは冒頭のイラストで紹介しています。2000年代に入ってからの活躍馬たちなので、ご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。写真や詳しい情報などは当サイトにもリンクがある「私設ばんえい競馬資料館」の重種馬名鑑ばんえい写真室に掲載されている馬が多いので、ぜひ見ていただければと思います。

 またダイヤテンリュウは、重賞13勝の女傑サダエリコの父でもあり、サダエリコからは世代戦を総なめにし、ばんえい記念も制した名馬センゴクエースが生まれています。センゴクエースはこのコラム1頭目に紹介した二世ロッシーニから続く最強サイアーラインを父系に、二頭目で紹介している鉄鯉から続く良血サイアーラインを母系に持っています。ばん馬の良血の粋を集めたような馬で、今後の種雄馬としての活躍が期待されます。

 キタノテンリュウ~ダイヤテンリュウの系譜はスピード、早熟性、鉄鯉のもつブルトン種の長所を伝え、広く発展しています。

注記:旧馬齢での記録は、現在の馬齢に置き換えて記載しています。

参考資料と写真提供

・ばんえいスタリオンズ 田島芳郎著
地方競馬全国協会機関広報誌「ハロン」1997年5月号~1998年5月号連載

★ばんえい DRAFT RACE
市営協議会会報 vol.2~19

・北海道種雄馬名鑑 思い出の名馬三十年史 

・日本馬事協会 登録馬情報 サイト

私設ばんえい競馬資料館 サイト
こちらのサイトは父系、母系、五代血統表等をわかりやすく編集してあります。ばん馬の血統について詳しく知るならココ!というサイトです。
別館のブログでも秀逸なコラムがたくさんあって、ばんえい競馬をより詳しく知りたい方にはおすすめです。
トップにもリンクバナーを貼らせていただいたのでぜひご覧ください。

種牡馬写真提供 ばんえい十勝
種雄馬の写真はばんえい十勝広報様よりご提供いただきました。
掲載写真については、ばんえい十勝広報までお問合せ下さい。

※数え間違い、引き写しミスなど調べもので間違いがあるかもしれません。ご指摘ありましたら確認・修正いたしますので何かありましたら「お問い合わせ」フォームからメールをいただけますと幸いです。