二世ロッシーニ~ばんえい史上最強のサイアーライン
※無断転載は厳禁です。よろしくお願いいたします。
ばんえい競馬史上最も優秀な種雄馬
二世ロッシーニは1966年に音更町で生産されたペルシュロン種です。1969年~1985年の16年間にわたり北見地方で供用されました。生産者が好む青毛(なぜか生産者は青毛好き)と、雄大な馬格で供用初年度から50頭以上の繁殖牝馬を集める人気種雄馬となりました。生涯の血統登録産駒数が527頭※。1979年には108頭もの産駒が生まれています(前年種付けは169頭)。まるでサラブレッドの人気種牡馬並みの数字です。
※この数字は日本馬事協会で調べた血統登録頭数です。手持ちの資料(週刊競馬ブックの記事)の総産駒数は、808頭となっています。
この数字が如何に突出しているかを補足すると、重種は繁殖牝馬の数に対して種雄馬の数が多く、1頭の種雄馬の生産頭数は多くても20~30頭ほどなのです。近年生産頭数が多い馬では21年生まれのフジダイビクトリー産駒が44頭(日本馬事協会の登録馬検索より)。人気種雄馬といわれているコウシュハウンカイでも昨年の種付け頭数は50頭ほどです。(※7月3日現在の産駒登録馬は17頭)
二世ロッシーニの種雄馬成績です。
リーディング(1971~1988年の市営協議会会報より)
2歳リーディング:1978 1979 1983
3・4歳リーディング:1981
5歳以上リーディング:1983 1985~1987
主な産駒 主な重賞勝ち
●キンタロー
農林水産大賞典「ばんえい記念」3回
●ハヤホマレ
旭王冠賞2回 チャンピオンカップ イレネー記念
●ヤマト
北見記念 チャンピオンカップ イレネー記念
●シゲノハラニセイ
ばんえい菊花賞 イレネー記念
●マツノコトブキ
未出走 種雄馬
晩成と言われるペルシュロン種にしてはめずらしく産駒は早熟で、3歳リーディングも3回獲得しています。イレネー記念馬も5頭出していて、黒ユリ賞やクインカップ、ばんえい菊花賞などの世代戦でも産駒は活躍しました。しかし早熟なだけではなく、古馬になっても成長力のある馬を多く出しています。代表産駒の筆頭キンタローは、ばんえい記念を3勝し、ばんえい競馬史上初の獲得賞金1億円馬になりました。産駒は早熟にして晩成。スピードもパワー兼ね備えた万能の種雄馬でした。
種雄馬としても素晴らしい結果を残していますが、何よりもこの馬が偉大なのは、産駒が種雄馬として大成功を収め、最強のサイアーラインを構築したことにあります。
ばんえい競馬最強のサイアーライン
主な産駒の中に未出走の種雄馬マツノコトブキを入れました。二世ロッシーニの活躍産駒から多くの種雄馬が誕生しましたが、最も成功した馬がこのマツノコトブキです。近年のばんえい競馬ファンにとってはウンカイの父と言うと、ああ!となると思います。二世ロッシーニ~マツノコトブキ~ウンカイとつながるサイアーラインこそ、ばんえい競馬最強のサイアーラインだと思います。それこそサラブレッドのHalo~サンデーサイレンス(USA)~ディープインパクトに匹敵するくらいの偉大なサイアーラインです。
マツノコトブキは二世ロッシーニの主な産駒で記載したハヤホマレの全弟です。馬体は兄よりも大きく競走馬としての活躍が期待されていましたが、蹄を患いデビューすることなく種雄馬となりました。若くして種雄馬入りしたことはかえって良かったのかもしれません。本馬は父を上回る種雄馬成績を収めました。二世ロッシーニのリーディング連続記録3年を超え、マツノコトブキは1994年~1998年の5年にわたりリーディングを獲得。産駒はヒカルテンリュウ、フクイチ、トモエパワーと三頭がばんえい記念を合計7勝しています。また、産駒はイレネー記念2勝、ばんえいダービーを4勝と早くから活躍し、古馬重賞でも旭川記念、北見記念、岩見沢記念、帯広記念全てに勝ち馬を出しています。マツノコトブキは二世ロッシーニさながらの万能さを示しました。
マツノコトブキの最優良後継といえば4歳重賞3冠を制したウンカイです。私たちが応援してきたなじみ深い馬たちの父馬になります。オレノココロ、センゴクエース、コウシュハウンカイ、フジダイビクトリー、ミスタカシマ、キサラキク…。ウンカイの産駒がどれほど活躍してきたか、記憶に新しいところです。そしてコウシュハウンカイ、フジダイビクトリーは種雄馬として期待され多くの産駒に恵まれています。二世ロッシーニからつながる血はこれからウンカイの子供たちの代に入り、今後も発展していくことと思います。
ばんえい記念ご用達サイアー
ばんえい競馬では獲得賞金が一億円を超えた馬を「一億円馬」と称えています。現在の賞金ではなかなか難しいのですが…かつての賞金であればオレノココロは一億円馬であったろうと思います。さてその一億円馬はキンタロー以下7頭います。
●キンタロー:父二世ロッシーニ
●タカラフジ:父タカラコマ
●ヒカルテンリュウ:父マツノコトブキ
●アサギリ:父リウリキ
●マルゼンバージ:父マルゼンストロングホース
●フクイチ:父マツノコトブキ
●スーパーペガサス:父ヒカルテンリュウ
このうち、実に4頭が二世ロッシーニの子孫なのです。ヒカルテンリュウは一億円馬にして一億円馬の父です。
なぜ二世ロッシーニ系に一億円馬が多いのか…種明かしはばんえい記念です。ばんえい競馬において最高賞金が出るばんえい記念において、この父系はとても適性が高いのです。キンタローは3回(うち帯広競馬場でのばんえい記念は1回)。ヒカルテンリュウは1回ですが帯広記念を2回、フクイチは3回、スーパーペガサスは4回と、二世ロッシーニの父系は帯広競馬場で行われる高重量戦に強い特長があります。
ヒカルテンリュウがスーパーペガサスを出したように、この適性はマツノコトブキの子ウンカイにも引き継がれました。オレノココロ、センゴクエース、フジダイビクトリーと近年のばんえい記念ではウンカイ産駒が素晴らしい活躍を見せています。
2019年のばんえい記念の第二障害の写真を載せましたが、写っている馬はみなウンカイ産駒。この時はこの4頭で1~4着までを独占しました。(左からコウシュハウンカイ(4着)、オレノココロ(2着)、フジダイビクトリー(3着)、センゴクエース(1着))まさにばんえい記念ご用達の面目躍如です。今後はきっとこの馬たちの中からまたばんえい記念を勝つ馬が生まれてくることと思います。
二世ロッシーニのインブリードを持つ
現役オープン馬
最後に、今現在のオープン馬の中から二世ロッシーニのインブリードを持つ馬をご紹介します。(父母、その父母と5代遡る32頭のうち何頭同じ馬がいるかを5代インブリード、あるいは5代クロスと言います。近親交配の血の濃さを示すものです)インブリードがある馬は日本馬事協会の検索先のリンクを貼りますので、5代血統表に興味がある方はぜひ覗いてみてください。
見方:Sは父方(Sire)。Dは母方(Dam)。例えばメムロボブサップは父方の5代前、母方の5代前に二世ロッシーニがいます。
■メムロボブサップ S5×D5
■アオノブラック S5×D5
■キタノユウジロウ S4×D4
■カイセドクター S4×D5
■オーシャンウイナー S4×D5
■マツカゼウンカイ S4×D5
■キングフェスタ S5×D5
またインブリードはありませんが二世ロッシーニの血を持つ馬オープン馬は以下の通り
・メジロゴーリキ(D5)
・キョウエイリュウ(S4)
・サクラヒメ(S4)
・ゴールドハンター(S5)
・インビクタ(S3)
・ウンカイタイショウ(S3)
2022年7月4日現在でオープン格付けは16頭いますが、そのうち半数近くの7頭がインブリードを持っています。また16頭のうち全く二世ロッシーニの血を持たない馬はアアモンドグンシン、ミノルシャープ、ヤマトタイコーの3頭しかいません。
伝説の種雄馬の血は今も主流であり続けています。
追記:生産牧場の方から、「コウシュハウンカイは昨年50頭越えで種付けしているよ。まだ登録が済んでいない馬がいるから日本馬事協会の数字は少ないけど、これからもっと増えるよ」と教えていただきましたので、加筆修正しております。50頭超の種付けは今の繁殖牝馬の数を考えるとすごい頭数! 産駒デビューが本当に楽しみです。
参考資料と写真提供
・ばんえいスタリオンズ 田島芳郎著
地方競馬全国協会機関広報誌「ハロン」1997年5月号~1998年5月号連載
・ばんえい競馬の仕組みと歴史(下)田島芳郎著
日本馬事協会発行「ホースメイト」No.52 2007年11月掲載 購入問い合わせ先リンク
★ばんえい DRAFT RACE
市営協議会会報 vol.2~19
・北海道種雄馬名鑑 思い出の名馬三十年史
・輓曳 これまでそして明日から ②ばんえい全盛時代 田島芳郎著
週刊競馬ブック2007年1月28日号掲載
※2007年 1/21日号から5回連載の短期連載「輓曳 これまでそして明日から」はばんえい競馬の歴史や血統、問題点などを書き出した素晴らしい連載記事です。帯広単独開催のおりに連載したものと思われますが、図書館などで閲覧できる機会があればぜひとも読んでいただけたらと思います。
・大種牡馬人気に沸くばんえい競馬~ばんえい版ノーザンテーストの蹄跡 旋丸巴著
プーサンVol.15 2000年 初夏号
種牡馬写真提供 ばんえい十勝
種雄馬の写真はばんえい十勝広報様よりご提供いただきました。
掲載写真については、ばんえい十勝広報までお問合せ下さい。
※数え間違い、引き写しミスなど調べもので間違いがあるかもしれません。ご指摘ありましたら確認・修正いたしますので何かありましたら「お問い合わせ」フォームからメールをいただけますと幸いです。