クインカップ観戦記

強引なレースをしたように見えたけど
それでも後続を離して勝ち切りました。
本当に強かったです
4歳女王決定戦!
4歳牝馬の女王を決める…この重賞は私はオークスよりも重い意味合いを持つレースなのでは?と思っています。と言うのも、ばんえい競馬では4歳まで馬齢による減量があります。さらに牝馬の減量で、4歳までは同条件の古牡馬に比べると30㎏の減量を貰うことができます。(年齢減量10㎏、性別減量20㎏)この10㎏アドバンテージが無くなるタイミングで繁殖に上がる牝馬が多いのです。4歳ぐらいからが繁殖としても一番いい時期…ということもあると思います。5歳以上になっても競馬場に残る選択した牝馬は、競走馬としての期待値が、繁殖牝馬としての期待値を上回る馬なのだと思います。
2025年11/16日現在の牝馬在籍数です。牡馬との比率としてみてもらうために(総在籍数)も記載します。5歳になると大きく減り、ばんえい競走馬として完成される6歳~7歳で走る牝馬はとても少なくなります。そもそも在籍数そのものも5歳になると2歳馬の半分以下になるので、世代戦の中で厳しい淘汰が行われている事にも気づかされます。
| 2歳 | 3歳 | 4歳 | 5歳 | 6歳 | 7歳 | 8歳 | 9歳 |
| 163 (357) | 85 (216) | 47 (143) | 19 (102) | 10 (64) | 6 (50) | 2 (33) | 0 (23) |
私がクインカップに重みがあると思うのは、このレースの上位入着を勲章に繁殖に向かうのか、競走馬の道を進むのか…分岐点になるレースだと考えているからです。勝ったカフカや上位に入着した馬たちは、この後どんな道をたどるのか。何度も帯広に行っているようで、一期一会になることが多い牝馬たち。特に4歳牝馬ともなると、来年会えない可能性も高いのでしっかりと見て来よう!と思って観戦に行きました。
クインカップ出走馬
前置きに一説置いてしまいましたが、クインカップの出走馬たちのパドック写真です。レース所感もこちらに記載しています。冗長になりますがお付き合いください。
1番 カフカ

体調の良さが伺えました

すごい気迫を感じました
この張り詰めた感じがカフカなんですよね
カフカって100%のパフォーマンスが出せたレースはまだないんじゃないかな?と思っています。第2障害を降りてから、走るタイプの馬ではないので、どうしても先行して先に坂を下って後続を封じる戦法を取りたい。でも、出が良く無い。スタートで後手に回ることが多いので、第1障害降りてから前につけるために気合を付けることが多く、そうなると生真面目な分かかってしまう。この、不器用で真面目で、ひたむきに前を目指す性格が大好きです。
でも騎手は大変だろうな…といつも思います。第2障害を十分息を入れて、万全のタイミングで上げる…という理想のレースがなかなかできない。今回も障害下で金田騎手座ってもっと溜めたかったろうけど、溜めきれずに第2障害にかかっていました。それでも今回はスタートからあまり置いて行かれずに済んだし、第1障害~第2障害間にかろうじて止められました。どうにか息を入れることができたので、第2障害も止まることなく上げ切れて、最後まで緩まず歩き切れたのだと思います。結果、とても強い内容でした。
ロータリーハローやヒーターといった冬仕様で、馬場が重くなっていたことも味方したはずです。かかってガンガン行けてしまうほど楽な馬場ではなかったので、かえって落ち着けたのだと思います。障害は上手ですし下りてからしぶとく歩ける馬なので、自他ともにペースが落ち着く、重たい馬場や重量を積まれたレースの方が、カフカはより強さを発揮できるのかもしれません。1月3日の4歳世代最強馬決定戦、高重量の天馬賞でも期待が持てます。
おまけですが、実はカフカの重賞勝ちは全て端枠なんです。カーネーションC、柏林賞は外端枠、今回は内端枠。ちょっと気になって調べてみたら、12勝しているうちの5勝が端枠でした。4歳OP特別のライラック賞も外端枠でしたので、カフカは馬に挟まれてレースをするよりは端枠の方が良いのかもしれません。
2番 ガーネット
ガーネット テキスト
5連勝で臨んだ大舞台。実は彼女が連勝で一気に賞金を伸ばしたことで、最愛の推し馬マルホンマユヒメさんは出走権利を取ることができなかった…という事も言えるのですが…実はギリギリまでマユヒメさんもクインカップ出走の当落線上にいたので、私は今回のクインカップ観戦を計画していました。ガーネットのクインカップ出走は本馬の素晴らしい成長力と、厩舎の仕上げのたまものだと思います。あゆみ先生も千尋さんも応援しているので「ばんえい競馬女性初!」をいろいろかなえてくれるかも?!と思って単複を100円ずつ買って応援していました。レースは積極的に先行してカフカの2番手で第2障害を下ろして…カフカの2着?!と思いましたが、重い馬場と重量で、最後まで歩き切れませんでした。それでも、果敢に先行して第2障害を止まらずに上げ切れているので、この障害力と先行力は今後のレースに生きてくると思います。ヒロインズカップに出られる馬になってくれたら…と思います。ナリタボブサップの晩年の産駒になります。(ガーネットの次の年は1頭しか産駒がいません)5/29日と遅生まれなので、4歳のここにきて本来の実力が出てきたのかもしれません。ナリタボブサップ(ばんえい記念3着2回)×母の父インフィニティー(ばんえい記念馬)なので、成長力もあるのかな。黒ユリ賞やばんえいオークスに間に合わなかった馬が開花するのも、クインカップならではかなと思います。

両女性ホースマンの初重賞制覇を
牝馬重賞で!という期待がかかっていました

合っていてとてもかわいかった!
牝馬重賞らしい華やかさでした
3番 ヨシノヒメ
ヨシノヒメ テキスト
オークス3着、ばんえいプリンセス賞3着、3歳時は上位で活躍していたのですが、4歳に入ってちょっと苦戦しています。格的にはマユヒメさんとほぼ同クラスだったので、ヨシノヒメに勝てたらマユヒメさん出れるかなぁ…と勝手にライバル視していました。今回はちょっと荷物も馬場も重かったようです。渡来騎手が大事に大事にレースを運んでいたように見えました。十分溜めたけど、第2障害が上がり切れず。ただ、前半大事に乗っていたので降りてからはグイグイ歩けていました。最後、良い勢いで歩けている下位入線の馬を見ていると、ばんえい競馬の前半のペースと第2障害が如何に重要なのかということがよくわかります。

すごくバランスがいいなぁ
という印象を受けました

たてがみ飾りやぴかぴかの馬具を見て
重賞出走したぞ!
という関係者の気持ちを感じます
4番 イワキエンジェル
イワキエンジェル テキスト
オークス4着、プリンセス賞4着、今回も4着。この世代の牝馬の上位で頑張っています。クインカップの2着~5着まではほとんど差が無かったので、本当に能力的にはこの世代のトップクラスにいるんだと思います。レース前半ゆっくり目に行って、障害下でもじっくり溜めて。第2障害は一腰で上げ切りました。あとはグイグイ歩いて…もう一つ上の着順!と最後中村騎手が懸命に追っていました。中村騎手は素晴らしい騎乗だったと思います。あゆみ先生の所のお嬢さんたちは2頭とも本当に頑張っています。この後牧場に帰るのか、もう少し現役を続けるのか…どちらかなぁ…。

あります。でもピカピカ!
元気に歩いていて、
調子の良さが感じられました

ガーネットとおそろいの色違い
こちらは中村騎手の勝負服と
コーディネートされていました
5番 スカーレット
スカーレット テキスト
今回のクインカップで2人気だったスカーレット。B2-1組を勝ち、銀河賞で3着、紅バラ賞で2着とオープン馬たちの中で先着し、カフカやスマイルカナより20㎏ハンデを貰っての出走なら納得です。先行して第2障害にたどり着き、しっかり溜めてカフカについで障害の登坂にかかるも、坂の中腹で止まってしまいました。すんなり上げ切るには、前半のペースがきつかったんだと思います。そこをごり押しして上げ切ってしまうカフカの強さを印象付ける結果となりました。ただ、下りてからは歩いて他の有力馬と競って3着。最後はホクショウレディーに差されましたが、良いレースをしました。
ところで…写真を眺めていて、あれ~~このちょっと眩しそうな山形で切れ長の目といい、ほほから鼻筋のラインといいどっかで描いたことあるなぁ…と思っていて…ああ!そうだ!メムロボブサップのサイアーラインで描いたサカノタイソンの顔だ!と思い至りました。左右逆ですがちょうど似たような角度の顔を描いたので気が付いたんです。何か所縁のある馬なのかな…と思って血統を調べてみたら、サカノタイソンと同牝系でスカーレットの母方の曾祖母はサカノタイソンの姉という血統でした。もっとも4代母が一緒というだけで顔は似ないと思うので思い込みかもしれませんが(笑)。ただ似てるなあと思った馬に所縁を発見して嬉しくなりました。

堂々と落ち着いて歩いていました

どこかで描いたことが有るなぁ…
と思ったらメムロボブサップのサイアーラインで
描いたサカノタイソンでした
6番 スマイルカナ
スマイルカナ テキスト
私の中では「馬場が重ければカフカ、軽ければスマイルカナ」と予想をしていました。両馬ともハンデがついているけど今までの実績が違うし、680~690㎏の斤量で出走する馬たちも、今まで曳いたことの無い重さを曳く辛さがあるので…、それなら重い重量でレースをしてたカフカやスマイルカナに分があるのでは…と思っていました。今回は馬場がカフカの方に味方しました。2~5着までは僅差レースで、5着のスマイルカナと上位の馬との差は積んだハンデ分だと思います。スマイルカナの持ち味はやはり降りてからの速い脚にあるので、重量や馬場は軽い方が良いんだろうなと思います。
ただ…今回ハンデ分で負ける…ということは、2~4着の馬との実力差がもうほとんど無いということ。この先の重賞では、今まで以上の斤量を曳くことにもなりますし、カフカとは対照的にスマイルカナは天馬賞では厳しい闘いになるのではないかと思います。

ブリンカー着用でした。
元気いっぱいに歩いていましたが
黒ユリの時のような暴れぶりではなく
お姉さんになったな…と感じました

たてがみ飾りは
オークスのものと同じかな?
赤い馬具とコーディネートされて
とてもかわいらしいです。
7番 クリスタルイプセ
クリスタルイプセ テキスト
黒ユリ賞2着、ヤングチャンピオンシップの予選北央産駒特別では1着で突破と、この世代を代表する馬です。近走もB2-1特別と前哨戦の紅バラ賞特別を勝ち、1番人気でクインカップに臨みました。ただ、今回は30㎏重くなり、馬場も重くなり…適性が出た印象です。先行して3番手で第2障害を下したのですが…残り30mで脚が上がってしまいました。でも、クリスタルイプセは障害を上げる時の腰の入れ方が本当に上手い…と見ていて思いました。現状では彼女にとって厳しい斤量でも、一腰で上げ切って降ろしています。この先、重賞から通常のレースの斤量に戻れば、また強い競馬をしてくれると思います。

ばん馬らしい体つきだなぁ
前脚の二本ソックスが愛らしいです

8番 ホクショウレディー
ホクショウレディー テキスト
お母さんのホクショウモモは、ばんえいオークスの勝ち馬です。このホクショウモモの母の福花には遠い祖先にサラブレッドのオークス馬をスウヰイスーがいます。ホクショウレディーはサラブレッドのオークス馬とばんえいオークス馬の血を引くというとても稀有な馬です。とはいえ7~8代も前だともうサラブレッドの面影は全然ないのですけれど…。ホクショウレディーも3歳~4歳にかけて成長してきた馬でした。クインカップのレース運びは赤塚騎手のファインプレーだと思います。第1障害を降りてから、第2障害に向かう道中も焦らず後ろから行って、さらに坂下でも十分にために溜めてすんなり上手に第2障害をクリアすると、見事な末脚で2着に入りました。届かなかったら仕方がないと腹をくくった赤塚騎手と、騎手の勝負に応えて素晴らしい末脚を使ったホクショウレディーのベストレースだと思います。生産者のご家族が熱い声援を送っていて、有力馬を差し切って2着に入った時にとても喜んでいたのが印象的でした。

良い馬体だなぁと思いました。
ピカピカの馬体で
のびのびと歩いていて
調子の良さが伺えました

ひらひら飾り。
馬具とコーディネートされて
綺麗です。
9番 オオネガイキンヒメ
オオネガイキンヒメ テキスト
3歳の黒ユリ賞のときから1000㎏を越えていて、馬格のある馬です。写真からは「大きい」という感じはしないんですよね。キュッ、ボンッ!という感じの体型です。2歳時から活躍していて、紅バラ賞でも3着だったのですが、やはりこの馬も重量かな…と見ていて感じました。第2障害本当に苦戦していました。現状、700㎏超の斤量で第2障害を越えるのはちょっと難しいかもしれません。

厚みのある馬体が印象的
トランジスタグラマーという感じです

という緊張感のある顔をしています
でもこの顔形、
ああ、これぞ重種だなぁ!
10番 カツエアリー
カツエアリー テキスト
ここは荷物が重かったし、ロータリーハローをかけた重たい馬場もきつかったようです。スタートから終始後方でした。ゆっくり行って第2障害下でたっぷり溜めても、障害を一腰では越えられなかった。障害のてっぺんで膝をついてしまいました。でも頑張って立て直して最後までよく歩いたと思います。勝ち鞍の最高重量が660㎏なので、今後重賞の斤量では雨雪の助けが必要かな…と思います。

脚長でシュツっとしてます
スタイル良い馬だなぁ

ごめんカツエアリー!
本当はとっても美人さんです
リボンが愛らしかったです
レース写真
下手の横好き写真ですが、レース風景です。



三頭とも第2障害で苦戦していました


この時点では2着はある?
と思ったんですけど…
口取り写真
口取り写真。勝利騎手インタビューでは金田騎手はずいぶん反省の弁というか控え目なコメントをされていました。思えば、カフカの手綱を取って重賞を勝った時、金田騎手はいつも謙虚というか、上手くいかなかった…という印象の話をしています。カフカがベストレースをしたことが無いんじゃないか?と私が思うのは、金田騎手の謙虚なコメントを見聞しているためです。でも折り合ったら折り合ったでそれはもう、カフカじゃない気がします。この気性でこそ、この成績なのかもしれないので…カフカって永遠の未完なのかもしれないなぁ。


なでなでされていました。
帰りたがっているのを
なだめすかされているシーンです

